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龍安寺蹲

2016/01/01
義務か笑顔か

 明けましておめでとうございます。昨年もまたご愛顧を賜り、厚く御礼申し上げます。
  さて、昨年私の心に残った出来事が三つあります。

 一つ目は、弊社の製造の担い手であるパートさんが、表参道のクレアトゥール・ウチノさんを見学したことです。社員の発案と内野代表の快諾によって実現したこのイベントですが、パートさんにとって、実際自分たちが製造している製品がどのように使われているのかを目の当たりにしたことは、大きな喜びだったようでした。さらに当日、女優の木村〇乃さんがいらしていたことも、感動を大いに高めたようです。後日のミーティングでも、「もっと高い品質の製品をつくらなくては」とか、「お客様の喜んでいる顔を忘れずに充填作業をしたい」など、さまざまな感想があがりました。実際、これ以降、作業室の床や製造器具が、今までにないほど磨き上げられているようになりました。そして、パートさんに感化されたのか、社員までもが器具の洗浄や日常の清掃作業に積極的に取り組むようになってきたのです。
日頃「自分がもしお客さんだったら、こういった会社でこんな人たちにつくってほしいと思うような行動をとるように」と言っても、なかなかぴんと来ていなかったのですが、今回の成果は、私にとって予想外でもあり、かつ本当にうれしい出来事でした。

 営業でも製造でも、また研究開発でも、「やらされている」「義務だから」と思っているうちは、いい仕事はできません。またいただき物をしたときでも、「お返しをしなくちゃ」とか「礼儀だから」とか考えるのではなく、「自分を気遣ってくれる人に何かしたい」と思いたいものです。こういった姿勢は、ただ「お客さん」を必ず「お客様」と呼ばせたり、なんでもイエスと答えるような、上辺だけの応対を続けても身につけることはできません。
  先日の忘年会でクリップ・ジョイント・ゴッドの若きマネージャーである森田氏が、弊社の営業に「自分で考えて営業しなくちゃ面白くないじゃないですか」と鋭い指摘をしてくれました。お客さんからの電話があってはじめて動くような反応型の営業では、いつまでたっても義務の域から出ることはできませんし、楽しくないから能力も上がりません。
  それに対し、お客さんの笑顔を実現するために能動的に考え行動することは、自ら仕事をつくることであり、とてもクリエイティブで楽しいことです。
今回のサロン見学会は、弊社のメンバーに自分たちの仕事がお客様の笑顔につながっていることを、改めて気づかせてくれた貴重な経験でした。

 二つ目は、新美容出版『マルセル』の最終号(2014年12月号)で特集「還元剤図鑑」を担当したことです。この特集は編集長の細田氏(現『経営とサイエンス』グランドエディター)から、還元剤をテーマに読者が10年間は手元に置いておきたくなるようなものということで依頼されたものです。この特集のため、私の主宰する美容師さんとの勉強会PCMのメンバーと、弊社の社員、そして私自身が1か月近くこれに掛かりきりになりました。
この特集は三部構成になっており、現在パーマで使用されている還元剤を、①科学的な実験データとビジュアルイメージ、②ウィッグでの検証、③実際のモデルでの応用編、の三方面から浮き彫りにしています。新たな実験データは4人の人間が3週間もかけて得られたものですが、以前『マルセル』に載せた還元剤パワーグラフをさらに充実させ、おそらく理美容師のパーマ剤選択の大きな助けになると思います。
今回の特集でも、弊社は自社製品を一切宣伝することなく、PCMのメンバー、さらに東洋大学の実務研修生も、理美容業界の発展に必ず寄与する企画であるとの認識で、ボランティアとして大変時間と労力のかかる作業を行なってくれました。新美容出版には、協力してくれた皆さんには感謝状かねぎらいの言葉でもかけてもらいたいものですが、私にとっては還元剤のビジュアルイメージなど、好き勝手に存分にやらせてもらったという満足感がありました。(詳しくは→「還元剤図鑑」

 三つめは、11月17日に初のPCMグランドミーティングが東京新宿のハイアットリージェンシーで開催されたことです。PCMは、毛髪科学の知識を応用してサロン施術の向上を図ることをテーマに、約3年前から私が主宰している勉強会です。PCMには絶対休んではならないという厳しい掟がありますが、通常の毛髪科学講習とは異なり、同じテーマを何回も繰り返したり、パーマやカラーの検証のためだけに調合された薬剤を、弊社の実験設備を使用して検証したりすることができます。
  今回のグランドミーティングでは、約2年間それぞれがPCMで実験、検証をしてきて得られたことを、科学者の前でプレゼンするという、美容界では前代未聞の発表会を行ないました。この会のために、PCMのメンバーは、4か月にわたり自分のテーマを再度検証したり、追加で実験を行なったり、慣れないプレゼン資料を作成することに没頭しました。会が近づいてくると、彼らの緊張はピークに達しました。
しかし当日、PCMのメンバーは、毛髪研究家の新井幸三先生や日本毛髪科学協会の木嶋理事長をはじめ科学者の前で堂々と素晴らしいプレゼンを行なったのです。総評をしていただいた新井先生からもお褒めの言葉をいただくことができました。PCMのみんなを心から誇りに感じた一日でした。(詳しくは→「PCMグランドミーティング」
今回の三つの事がらを通じて私が感じたことは、どの例も最後は笑顔につながったこと。とくに厳しい仕事や経験のあとに得られた笑顔は、なにものにも替えがたい喜びを皆にもたらしてくれるということでした。逆にこういった笑顔を求めて行なうことこそ本当の仕事であり、仕事の原動力もまたその先にある笑顔なのです。

PCMグランドミーティングのパーティでは、元宝塚スター夢輝のあさんが「あのジュピターをめざして」と題し、ジュピターをはじめPCMの将来を祝福した数々の歌を歌ってくれました。これにならって私たちヌースフィットの今年のタイトルは、「あの笑顔をめざして」にしたいと思います。

平成二十八年 元旦                株式会社ヌースフィット 亀ヶ森 統