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龍安寺蹲

2014/01/01 
本質(essence)はどこにあるのか?キラーアプリ(killer appli)をつくりたい。

あけましておめでとうございます。昨年も弊社製品をご愛顧いただき、誠に有難うございました。
今年の干支は甲午(きのえうま)。きのえとは亀の甲羅の意味とか。そんなわけで木馬に乗った亀(私)をイメージして年賀状のデザインをしてみました。

 さて昨年の美容界も、スピエラストレートを筆頭に、様々な技法や薬剤が現れ、話題になりました。
弊社の薬剤やFMCBなどのシステムが、スピエラストレートや『マルセル』の特集など、多くの局面で使っていただけたのは誠に幸いでした。
ただ、薬剤やシステムを探そうと考えている技術者が、膨大な薬剤や技法がある中で本物を探すことは大変な作業です。本物はすぐわかるという人がいますが、本当でしょうか?

 大門一夫はかつて、「よりよいものを求める人のために本物だけを創りたい」と言いました。
これはこれでりっぱな標語なのですが、そもそも大門と一緒に薬剤を開発していた私自身が、本物って何だろうと考えてしまいます。自分の中の本物とウソ物がおおよそわかるくらいで、他人が本物かウソ物かはほとんど判断できません。
おそらく仕事に必要なのは「本物」ではなく、「本質」がどこにあるか知ることではないでしょうか?例えばあるシャンプーが洗髪剤として問題があっても、その本質においてトリートメントとして優れた性質を持っていれば、そして使う側がそのことを認識していれば、プロとしての武器にもなるわけです。
しかし、本質を知る作業も大変であることには変りありません。

 特に、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)が広まり、テレビと同じように情報が何の努力もせずに目に飛び込んでくる世の中になったおかげで、どんなことでもなんとなくわかった気がして、理解したと錯覚してしまう人が多くなった気がします。美容界でも錯覚が錯覚を呼び、多くの人がある情報にさぁーっと流れていってしまいます。
物理や化学などの学問は基礎から学ばなければものにならないのは当然なんですが、ネットで上辺だけを見て知った気になってしまい、他人にまで誤った情報を拡散してしまう。ネット上の情報はまさに玉石混淆です。
あなたが今SNS上で「いいね」をした情報は、数年後も「いいね」を押せるものなのでしょうか?

 こうした状況の中では「一歩引いて見てみる」ことが大切なのではないでしょうか。
木馬は玩具ですが、石川啄木は『悲しき玩具』の中で、「凡そすべての事は、それが我々にとつて不便を感じさせるやうになつて来た時、我々はその不便な点に対して遠慮なく改造を試みるが可(い)い。またさう為(す)るのが本当だ。我々は他(ひと)の為に生きているのではない、我々は自分の為に生きてゐるのだ。」と言っています。しかし、不遇な啄木には、社会の体制など色々変えたいものがあるのに、自分に変えられるものなど、置時計の針などわずかなくだらないことしかない。そのひとつが歌(和歌)であり、彼は「歌は私の悲しい玩具である。」と言っているのです。

 話はそれましたが、『悲しき玩具』には次のような歌があります。

   人がみな
  同じ方角に向いて行く。
  それを横より見てゐる心。

 流行に流されず、一歩引いて、自分が得たいものの本質は何なのかを冷静に考えてみる。さらに自分の現在の力量も冷静に評価してみる。
午年の午(うま)には逆らって成長するという意味もあるそうです。みんながいいね、いいねと言っていても、「ちょっと待てよ」といったん止まって自分の知識を総動員して考えてみる。みんながあれはダメだねと言っていても、「あの機能は使えるんじゃないか」と気づく。
カラートリートメント、弊社でいえばカラーバター、チャンティックは、大方の美容師さんが「出来損ないのカラー」と言って相手にもしなかったにもかかわらず、あっという間に一般向けで大きな市場が形成されてしまいました。お客様の求めているものは染まりだけではなく、多様なニーズがあることを考慮せず、「あれはダメだね」で片付けてしまった結果です。ホームカラーはダメだ、カラートリートメントは出来損ないだと言っているうちに、今やカラー市場でサロンの比率は20%程度になってしまったと言われています。

 さてヌースフィットの方はといえば、皆さまと同じで今年も本質はどこにあるのかを問い続けてまいります。
そのためには、今まで同様、なかなか新製品を出さない会社でいい。幸い私が主宰する少人数の勉強会PCMのメンバーの多くが、昨年も『マルセル』『しんびよう』などで取り上げられ、毛髪研究、処方開発と美容の現場での作業の、より密接な協力体制ができつつあります。そして今年はPCMの地域を広めようと思っており、仲間とともに美容技術革新を目指してまい進してまいる所存です。引き続き内容の濃い講習会も各地で開催する予定です。また第7回アジアビューティエキスポにも出展する予定です。昨年1000回を超えた「きょうの毛髪科学」もしこしこ続けてまいります。
 そして、本質に近づけたなと思えたら、ぜひ皆さまの仕事を著しく向上させ、長年にわたってお使いいただけるような商品、すなわちキラーアプリをつくってみたいと思います。
どうぞ本年もよろしくお付き合いの程、お願い申し上げます。末節ながら、皆様の本年のご健勝・御発展を祈っております。

平成二十六年 元旦                株式会社ヌースフィット 亀ヶ森 統